高い耐震性能・排水性能を共に備えた箱型擁壁工法は全国各地で採用されています。急速施工が容易で災害復旧にも最適です。

新潟県中越地震調査報告書


直下型大規模地震発生
平成16年10月23日 午後5時56分
新潟県中越地震発生

地震発生

直下型大規模地震が新潟県中越地方に発生、その後数時間に亘り本震に匹敵する強い余震が断続的に発生しました。マグニチュード6.8、川口町で震度7を観測しました。破壊力を示す加速度は午後6時34分の余震で震度6強を観測した際に、兵庫県南部地震の3倍を越える観測史上最大の2515galを示していました。今回の地震は内陸の交通の要衝が大きな被害を被りました。


被災調査

第一次現地調査(平成16年11月9日〜12日)

震央を中心にして、20k m圏内に設置されている箱型擁壁を、目視により隈なく確認することから始めました。その結果、多少の変状が見られるが、修復や、積み直しをしなくても擁壁として機能を失っていない箱型擁壁は今後の調査対象としない判断をしました。
その結果1箇所において変状を確認しましたが、二次調査時に詳細な調査を行なうことにしました。

擁壁前の歩道が盛り上り溜枡の
グレーチング蓋がS字型に潰されています。

擁壁前面道路は中央線付近に南北方向と横断方向
方向に3ヶ所で大きな開口亀裂と段差がありました。


第二次現地調査(平成16年11月21日〜24日)

 

一次調査の結果、震央より450m程の位置(川口町大字木沢地区)において、高さ11m×延長 58mの箱型擁壁の変状を確認しました。擁壁はほぼ南北方向を軸に設置され、擁壁前面は軸方向(南 8°W)に約 8%の下り勾配の道路になっています。
道路舗装面は横断方向に3 箇所に亘り大きく割れて軸方向にも、また擁壁の反対側方向にもずれているのが舗装の割れなどで確認できます。擁壁向かい側(東)の家屋は一階部分が崩壊、見えるのは二階部分のみです。また擁壁南側(道路下方)の支持地盤付近の地形が前面道路方向に移動しているのが確認できます。箱型擁壁を目視により確認すると、壁面南側(道路下方)の一部は、箱体の目地が開き、壁体材(単粒度砕石)が一部流出しており、箱体も南側方向と背面側に少し傾斜しています。

擁壁背面陥没(深さ約1.2m程)

また擁壁背面土が巾1m長さ15 〜20m、深さ1m〜1.2m程陥没、そのため上段にある箱体が壁体材と共に、陥没した 背面側に大きく傾斜しており、その部分は擁壁としての機能を失いつつありました。しかし擁壁全体としての機能は喪失しておらず、生活道路として震災直後から今日まで障害なく保持していました。
二次調査の目的である擁壁機能復元検討に対して、専門家を交え目視による調査と、背面土採取の上、土の三軸圧縮試験などを行い箱型擁壁各段の小段巾計測に よる設計の再計算(小段巾の設計上の余裕)を行いました。その結果変状の多い擁壁最上段部と、目地の開口によって壁体材が流出した南側の一部を、積み直すことが必要と判断しました。
緊急な工事は必要ないものの、変状の進み方によっては積み直し部分が増加することも考えられました。擁壁背面土の陥没によって、背面からの排水が妨げられ、 雪解け水などによって背面水位が上昇し、通常の土圧に水圧が加わり、変状が起きていない他の部分に影響を及ぼす可能性もあり速やかに積み直し工事が進められるよう、一部積み直し案を作成し提案しました。

 

擁壁前の道路交差部も激しく
割れて左側へずれている

調査中

道路中央線付近開口亀裂及び、
段差の深さ測定

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被災位置の確認

 

震央より450m箱型擁壁前
溜枡のグレーチング蓋

震央より450m
箱型擁壁前の家屋

震央より450m箱型擁壁前の道路
横断方向に開口亀裂と段差

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対策案

擁壁の機能復元対策案として提案しました

箱型擁壁工法は、箱型形状をした鉄筋コンクリート製のプレキャスト枠材(以下、箱体という)に、壁体材(中詰め・裏込め部)の単粒度砕石を密実に充填し、それらを階段状に積み上げて構築する擁壁です。
新潟中越地方で発生した非常に大きな地震によって、擁壁の断面形状(擁壁勾配)の変形や箱体間の一部から単粒度砕石が流出する程度の目地が開く変状が確認されました。擁壁の断面形状(擁壁勾配)の変形については、小段幅の計測データと背面土の土質試験データを基に安定計算を行い、被災後の断面形状でも安定性を確保できる結果となりました。ただし、箱体の傾斜や目地間の開きなどが確認されており、被災前の現状復旧の観点から箱型擁壁協会として、箱体の一部積み替えをする提案をしました。
その内容として、箱体間の目地が開いた部分については、上段から箱体を一旦取り外し再利用して積み直す、復旧対策工事の提案を行いました。その際に壁体材である単粒度砕石流出防止の機能向上として、箱体間背面に写真のようにネトロンシートを取り付ける提案をし、この対策方法は、新設物件に対しても箱型擁壁工法の機能向上になると考えられ、震災後標準仕様としました。

 

震災直後より箱体の目地開口による壁体材流出の防止策として、暫定的に箱体目地材設置を実施しました。

箱体背面より目地材写真

箱体背面突き合わせ部

ネトロンシート

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監視と測量

第二次調査において擁壁機能復元対策案として提案した一部積み直し案に基づき、工事着手まで変状の進行について記録と監視を第五次まで続けました。

第三次現地調査

本震発生13ヶ月後の平成17年11月28日より30日まで第三次調査を 行ないました。調査の目的は、震災直後の大きな余震、長雨、積雪、春の融雪等の自然の営みが箱型擁壁や周囲の地形に変化を及ぼしていないか、 また特に変状している箇所がどのように進行しているのか、また変化が ないかなどを確認することです。
調査の結果、擁壁背面の陥没がやや進んでいるのが計測されました。 また箱型擁壁の小段巾も少しですが一部において縮小しているのが計測確認されました。周囲の地形については変化がなく、擁壁全体についても機能を保持しており、車両などの通行に支障はありません。平成16 年に提案していました復元案が採用され、平成18 年夏頃に工事着手が決まりました。

監視と計測

 

専門家も交え調査中

監視と計測

監視と計測

第四次現地調査

平成18年5月8日〜10日に雪融けを待って第四次調査を行ないました。箱型擁壁協会では工事に着手するにあたり測量が実施されたので復元案(現況復旧)の詳細な断面図を作成し、設計・計算等の再確認作業を行いました。

 

積雪状況(平成18年冬)

一部積み直しのための測量

箱型擁壁の各横断位置測量

擁壁背面陥没部分確認

第五次現地調査

平成18年5月23日〜24日現地において安定計算等の設計確認作業が終了しました。
その結果変状していない部分については安定していることを確認、変状している最上段部と南側の部分を積み直しすることになり陥没が見られる背面土も同時に修復することになりました。

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工事着工

「背面土等の修復及び箱型擁壁の 一部積み直し工事」として平成18年9 月に着工しました

測量終了後、測量データーを基に、箱型擁壁協会・設計技術部会による設計確認作業を行いました。その結果現在の状況(形態)のままで安定している事を確認、直ちに県の担当者に報告が行なわれ、発注者側、施工業者、箱型擁壁協会会員が現地で立会い設計の確認、施工の手順など打ち合わせ、工事を進める事になりました。まず箱体を取り外す作業からスタートしました。

 

撤去状況
(壁体材の取り除き状況)

壁体材を取り除き集積する

壁体材を取り除いた後、
箱体取り外し

取り外した箱体の集積場

箱体の取り外し作業はクレーンと重機を使用し慎重に行なわれました。壁体材(中詰め単粒度砕石)の再利用率は背面 土の陥没による土砂混入もあり50%〜55%程に留まりました。箱体はほとんど再使用しました。

 

箱体の取り外し後、積み直し作業に入りました

積み直し工事は背面陥没の修復も含め 15 日ほどで完了しました。

 

積み直し作業着工

積み直し工事に箱体目地材を
新規採用(ネトロンシートZ31)

基礎単粒度砕石転圧作業

 

壁体材転圧作業

箱体据付作業

各段据付作業

平成18年10月工事完了

地震発生前

地震発生 18 日後 地震の影響で、
1階部分が押し潰されました。

工事完了

新潟県中越地震は、新幹線の脱線、トンネル内の壁の崩壊や地盤の隆起など、様々な技術の基準を超える被害のあった地震でもありました。日本列島で現在判明している活断層は約2000を超えています。未知の活断層が今も古墳の発掘の際に発見されています。海溝型地震の予知はかなり進んでいますが、直下型の地震予知は非常に難しいと言われています。耐震性能に優れている箱型擁壁を今後さらに安全性を高めた工法に進化させ、国のライフラインを維持、国民の財産を守るために貢献することを誓い、震災から修復までの報告を終わります。

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